はじめに
英語の授業はどんどんコミュニケーション力・表現力の向上に重点が置かれるようになり、教員研修でも「とにかくしゃべらせる」授業の提案がよくなされます。もちろん英語はそもそもコミュニケーションツールなので、そういった授業が望ましいのは当たり前なのですが、授業でアクティビティを行うと「生徒がいまいち乗ってこない」「ただ遊んだだけで終わってしまう」と言った悩みが出てくるのではないでしょうか。
かくいう私も、同じ悩みを持ちながら授業してきた経験があります。一時期はアクティビティそのものが億劫になるほど・・・。
しかし約10年試行錯誤し、ある程度は機能するアクティビティを実施することができるようになってきました。その中で、何に気をつけるようになったか・どんなアクティビティをしてきたかをまとめてみました。あくまで一個人としてのまとめですが、上記のような悩みをお持ちの先生方に少しでも役立てばと思います。
1:大切なのは下地作り
アクティビティを行う上で大事なのが、アクティビティができる下地作り。ターゲットセンテンスを練習する前に習得していなければならない基礎力が、果たして生徒たちにはついているでしょうか?
●動詞をなるべくたくさん知っていないと大変
アクティビティには大体ターゲットとなるセンテンスがあります。たとえば過去形の疑問文Did you 〜?がその日のターゲットだとすると、「〜?」に入る語を変えてあれこれ文を作るようなアクティビティになるかと思います。
そのとき、「〜?」の部分に入る動詞をたくさん知っていないと、アクティビティが成り立ちません。ワークシートにヒントをたくさん書いておくのも手ですが、それだとヒントばかりに意識が行きがちで、肝心のDid you〜?の印象が薄まってしまいます。
動詞の知識はこの時間のメインではないので、できれば「すでに知っている」状態になっているのがベスト。自由英作文するときに、思いつかない場合のヒントとして提示する程度にまで動詞を習得できていると良いです。
●そもそも単語が読めないという生徒もいる
単語が読めない生徒が多い場合、アクティビティを成り立たせるのは至難の業ですよね。私も1度経験があります。中学2年生になるのに、かなりの生徒がスペルを読めない読めない。もちろん意味もわかっていません。
そんな生徒たちにとって、「スペル読めるよね?動詞の意味わかるよね?」という前提でアクティビティが始まるのは荷が重いものです。初めからやる気なんて起きません。
少し時間はかかりますが、最低限ふりがな無しでも英単語が読めるように日頃トレーニングしておかなければなりません。
●上記2点の対策
動詞の知識・スペルの読み方、これらの対策として私は毎回授業の始めにビンゴゲームをしていました。宿題で英単語のビンゴシートを完成させておき、ビンゴゲーム10分間。意味を確認したり、スペルを確認したりしながら進めます。音を聞いて単語を選ぶことに10分集中するだけでも、数カ月でほとんどの生徒が読めるようになっていました。
また、動詞の意味を定着させるには絵を使うのが効果的でした。新規文法の導入や復習などで必ず動詞のイラストを提示して練習します。それを通年で何度も登場させるうちに、授業内で動詞の意味を聞かれることはほとんどなくなりました。
●オマケ:あいづちやリアクションも日頃訓練しておくと、やりとりが増える
アクティビティは大体が他人とのコミュニケーション活動なので、何かしらリアクションができると英会話っぽくなり盛り上がります。
同僚からの受け売りですが、私の場合はリアクションのパターンを日頃から提示するようにしていました。Oh,really? That’s great! I see. I’m sorry… Me, too.などなど。ただターゲットセンテンスを練習するだけより会話が長くなりますので、オススメです。
2:いざ!アクティビティ実践!
さて、ここからは実際に私が行ってきたアクティビティを紹介したいと思います。それぞれ狙い・注意点を挙げましたので、参考になればと思います。
いきなり申し訳ないのですが、紹介するまでもないド定番中のド定番です。
こちらは会話練習ではないのですが、三単現の練習や少し長めの文になってきたときに練習量を増やせます。
助動詞shouldが単元のときに行ったアクティビティです。
Which ◯◯ do you like?の練習で行いました。
比較級の練習で使いました。同僚からいただいたアイデアです。準備が大変ですが、ポケモン的イメージがあるらしく、どこのクラスでも人気の活動です。
3:アクティビティを行う心構え
どんなアクティビティを行う場合にも言えることですが、実践中に大事なことをいくつか挙げておきます。
●ダラダラ続けない(タイマー必須)
あまりに長いといつの間にかただのゲームとなり、無法地帯に。関係ないおしゃべりや遊びが勃発し、良いことはありません。内容にもよりますが、15〜20分程度にとどめておく方が効果的だと感じました。
●不正があるときはすぐに中止
インタビューゲームで起こりがちな「例文を練習しないで日本語で喋る」等です。ゲームなんてくだらない、という空気に呑まれてはいけません。開始前にルール確認をし、不正が目に余るほどなら中止して全体指導です。(私は「10人と会話しよう」を1分で終えて座った生徒がいたので中止したことがあります。なぜアクティビティをするのか、そういう態度で臨まれるとどうして困るのかをクラス全体で指導し、その後は大丈夫でした。)
●フィードバックタイムを設ける(紹介・発表・たまに表彰)
アクティビティを通して、ちゃんとターゲットセンテンスを習得できたのか確認する必要があります。発表させたり、指名して紹介したり、競争性のある活動の場合は表彰しつつ全体でセンテンスの確認をしたり。
●人間関係的に不利な生徒をフォローする
これは何年教員をやっていても悩ましい問題です。普段からクラスに馴染めない生徒はどうしてもいるので、なかなか「みんな仲良く」はできないものです。
そうした生徒には教師が練習相手を務めたり、話しかけてくれそうな生徒にこっそり声をかけたり等のフォローをして、アクティビティの時間を孤独に過ごさないようフォローしなければなりません。担任との情報共有も欠かせません。
おわりに
以上、アクティビティを機能させるためのポイント(と言ってしまうのはおこがましいのですが)を、私自身の経験を振り返ってまとめて見ました。
アクティビティは準備がとにかく大変ですが、活動後にターゲットセンテンスを使って遊んでいるのを見ることもあり、やって良かったと思うことも多いです。あれこれ挙げましたが、何より教師自身が楽しんで行うことが一番のコツかと思いますので、ぜひ挑戦していって欲しいと思います。
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