コーパスを利用して、データに基づいた効果的な教材を作成し、実際に使われている例を提示すれば、生徒の興味を引くことができる。
また、学習者が書いたエッセイなどを集めて学習者コーパスを作ることもでき、英語学習者の陥りがちな間違えや、英作文の傾向をみつけられる。
コーパスを利用すればより実用的で効率的な教材を作成したり、より多く使用される共起パターンを学習者に教えたりすることができる。
特に類義語の使い分けは、非母語話者には難しいものだが、コンコーダンサを通したデータを見れば、類義語のごく小さなニュアンスや語法の違いを見分けるのにも役立つかもしれない。
コーパスを利用した教材の開発には大きく分けて間接利用と直接利用があり、間接利用は教師がコーパスを使用した教材を作りそれを授業で使用するもので、直接利用は、コーパスやコンコーダンサそのものを教室に持ち込み、教材にする。
ここでは、実際に「Velonica Mars」と「FRIENDS」という2つの海外ドラマの字幕データを使い、「let me+動詞の原型」と「make me+動詞の原型」の共起パターンについて比較を行い、教室内でどのようにコーパスが活かされるのかを考えていく
「Velonica Mars」の単語データは、トークンが約100万語でタイプは約2万語である。対して「FRIENDS」の単語データは、トークンが約200万語でタイプは約3万語である。
「let me + 動詞の原型」共起パターン
1位:see (63)
2位:ask (34)
3位:know (34)
4位:do (14)
5位:help (12)
「 make me + 動詞の原型」共起パターン
1位:feel (14)
2位:go (6)
3位:do (5)
4位:look (5)
5位:come (4)
次に、このデータを使った言語教授について考える。
・間接利用の場合
得られた情報から、「let me see」や「make me feel」という共起パターンが多いことが分かる。従って、頻繁に使われる動詞も学習者に同時に提示することで、その後の英語学習の中で、今回学んだようなパターンに遭遇する確率が上がる。
また、目的語を伴わない「let me see.(ええと。)」と、伴う「let me see it.(見せて。)」の違いにも目を向けて、学習者に注意を促すことができる。
・ 直接利用の場合
直接利用は、学習者に直接ソフトウェアを操作させ、目標言語や単語の用法などを学習する方法であり、データ駆動型学習とも呼ばれている。
直接利用の場合は、これまでのデータ抽出の過程を学習者自身に行わせることもできる。コーパスを使って学習者に調べさせる項目をあらかじめ決めておくこともできるし、全く決めずに、調べる内容は学習者自身にまかせるという方法もある。この方法では、学習者は自分が知らなかった知識を、自ら調べながら新たに獲得できるので、「発見学習」や「調べ学習」と似た部分がある。調べたことはノートなどにまとめさせ、学習ポートフォリオとすることもできる。
直接ソフトウェアを操作させるためには人数分のコンピュータが必要になるが、十分な設備がない場合、コーパスを使って得られた生のデータを印刷し、それを配布するということもできる。
学習者コーパス例